チャップリンと木の下で いつか語り合いたい、来世あたりに。
copyright © 2006 チャップリンと木の下で all rights reserved.
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 |
告白/湊かなえ
2009-10-24 Sat 18:28
「愛美(娘)はこのクラスの生徒に殺されました」



女性教師のそんな「告白」からはじまる物語。

事件をきっかけに、それぞれの心の底に渦巻く負の感情はどんどん肥大化し、最終章まで連鎖する。そして、それはその後もどこまでも果てしなく広がっていくかのようだ。



愛する者を奪った者への「裁き」は、
決してあけてはいけないはずの心の闇の箱を開いていく。
ひとり、またひとりと。

人はみな、こんな風に独りよがりの世界で生きているのだろうか。

それぞれの独白は、愛する者への愛に満ちている反面、恐ろしいほど自分だけに都合よく、滑稽なほどに自分勝手な妄想で作り上げられている。登場人物の誰一人として共感できない所ばかりのはずなのに、なぜかところどころ自分にも通じる部分があることに気付いた。怖くなった。



一度読み出すと、第1章からもうどうにも止まりません。

自分の闇の箱までも開けられそうで、もう見たくないようなものばかりなのに先へ読み進めてしまう。



何より作者のものすごく切実な思いが込められているようで、その勢いにひたすら圧倒されました。



ラストはかなりぶっとんでますが、
こんなに苦しくて、でも面白い作品には久々に出会ったような気がします。


スポンサーサイト
別窓 | Books | コメント:0 | トラックバック:0 |
御手洗シリーズ備忘録 その3
2008-04-04 Fri 16:34
島田荘司さんはかっこよかった。
大変ジェントルマンでダンディなおじさまでした。


『ネジ式ザゼツキー』

2003年に出版されたということで、御手洗潔ももう50代。
若い頃の変人ぶりはどこへやら?な感じだったけれど・・・。

記憶喪失の男が、スウェーデンの脳科学者御手洗教授のもとに『タンジール蜜柑共和国への帰還』という自作の本を持って現れる。その奇妙なファンタジーの中に散りばめられている記憶のかけらから、御手洗教授が男の人生の空白の謎を解明する。そして皆の目の前にあらわれたのは、あまりに哀しく衝撃的な事実だった。ひとつの偶然とひとりのある想いが引き起こしたこの事件は、奥に行けば行くほど「誰かの誰かへの想い」が複雑に絡み合った事件だった。

それぞれの「正義」を主張するために、はるか昔から争いを繰り返す人間はこれからどこへ向かうのだろうか・・・。今あるこの世界は、あまりにも多くの犠牲や悲しみの上にあるんだな。
ほんと、島田先生の本は痛い。痛いけれど、これは知っておかなければならない痛み。

脳の話はとても興味深く、難しいところもあるけれど一気に読めました。
時代が時代だけに、インターネットや電話を駆使して研究室内で御手洗さんは謎を解いちゃいます。
普通ならこういう設定だと途中で飽きてしまいそうですが、無駄っぽいところもなく早く次へ次へと読めるところがすごい。

正直途中のグロイ描写がきつかったけど、これは人間が実際に同じ人間に対して行ってきた愚行そのものなんだろう。私が知らなかっただけで。知らないということもまた罪だ。



別窓 | Books | コメント:0 | トラックバック:0 |
御手洗シリーズ備忘録 その2
2008-03-27 Thu 16:00
『眩暈』

『ぼくのまわりのなにもかもが、どくでよごれています・・・』

という大きなひらがなだけで書かれた奇妙な手記から始まる。
死体を組み合わせて両性具有者を作り出したり、外の世界が突然世界の終わりのような光景に一変したり、と精神異常者の手で書かれたものとしか思えない文章をきわめて論理的だと解釈し、御手洗潔が鮮やかに謎を解き明かす様は見事。

自分のすべての物事に対する見方がいかに狭いものかということに気付かされる。
終始広がる幻想世界に迷い込んだかのようで、この世界観に酔う。
何度も自分の視点をひっくり返され、そのトリックのスケールもかなり大きなものになってます。ひとつの悲しい事件を覆うこの幻想性が、謎をさらに広げてそして深めているような。

そして、豊かさと引き換えに人間たちが失ったもの、犠牲にしたものに対する作者の深い想いを感じる作品でもありました。この世界の隠れたところ、または隠されたところにこそ、想像を絶する深い悲しみがいつの時代にも存在しているということを感じる。

事件の真相が、トリックによって真実とは一見まったく違って見えるように、深い痛みや悲しみほど見えないベールに覆われているのかもしれない。



『水晶のピラミッド』

古代エジプトの悲恋、タイタニック沈没、アメリカ・ビッチポイントなど時空を超えたいくつかのストーリーを展開しながらひとつの世界観が出来上がっていく。それぞれの物語がとても興味深く、それらが事件に繋がっていくから面白い。この作品が取り扱うテーマ自体も「文明の死」というとても大きなものです。

アメリカ・ビッチポイントにある学者によって作られたピラミッドで起こった事件を中心に物語は展開しますが、今回もとてつもなく大掛かり(笑)謎解きどころか、ただただスケールのでかさに驚かされるばかり。そして、ラストのラストでさらに驚愕・・・。

正直トリックなどは何がなんだか分からなくなってくるけれど、どんなに大風呂敷を広げても最後にはちゃんと人間を人間として描いている気がするのです。
本格ミステリなんだけど、読後のいつも感じるこの切なさは何だろう?と考えた時に『眩暈』のレビューにも書いたように、そこには気付かれることのない痛みや悲しみに対する作者の想いが込められているからなのかなと思います。

ピラミッドの謎について語られている部分もとても興味深い。
そして、スキューバやエジプト旅行を疑似体験までできる。臨場感(?)あるんですこれが。
御手洗シリーズの中では多少物議をかもし出している作品と聞きますが、作者がひとつのところにとどまることなく作品ごとに色んな試みをしているような感じが私は好きです。

カフェで4時間読み続けてもあまり進まない程、私にとっては少し難解で分厚い本だったけど(笑)






別窓 | Books | コメント:0 | トラックバック:0 |
~島田荘司の御手洗シリーズ備忘録~
2008-03-15 Sat 13:39
『占星術殺人事件』

島田荘司デビュー作。
本格ミステリの中では常に名前が挙がる程有名な本書。
私は残念なことに、全く同じトリックが使われている某少年の事件簿の方を先に読んでしまっていたので、読む前からトリックはネタバレしていました。無念。ほんとに無念・・・何も知らずに読んでいたらどれほど感動が大きかっただろうと思うばかり。ああ無常。意味不明。
でもネタバレしていても後半の展開にはぐぐっと引き込まれ、一気読みしちゃう程。
途中から舞台が京都に移るので、情景を思い浮かべながら読めたのもまた楽しかった。
特に犯人と会う場面はドラマティックで感動すら覚えます。
ストーリー、トリック、人間心理、御手洗潔・・・この本には楽しめる要素がたくさん詰まってました。
最初に小難しい手記があるけれど、このしんどさをかるーく飛び越える感動が読後にはありました。


『斜め屋敷の犯罪』

御手洗シリーズ二作目。
北海道の宗谷岬にある斜め屋敷が舞台となった館もの。
最初の方は、正直「ありきたりやなこの展開」と思いながらなんとはなしに読み進めてました。
館に招かれた客が密室で殺され、あれやこれやの間にまたもうひとつの密室殺人が起こる。
御手洗ファンの私的には、彼が後半1/3くらいまで出てこないのでまだかまだかと思いながら若干イライラしながら読んでしまいました。でもやっぱり後半の展開のすばらしさはさすが。
もはや芸術とも言えるほど緻密で壮大なトリック、犯罪にいたるまでの犯人の人生や心理などが心にしっかり残るものだった。御手洗さんのさらっという一言にはいつも感銘を受けます。


『暗闇坂の人喰いの木』

物語全体に漂うおどろおどろしいけどどこか幻想的な雰囲気がとても好み。
読みながら背筋が凍る・・・いやいやほんと、処刑の歴史を絵&写真付きで淡々と語られた時は本当にページを読み飛ばそうかと思った(笑)この本には怖いけどそれ以上の好奇心を駆り立てる何かが確かにあります。だからやめたくてもやめたれない。
トリックもいつもどおり奇想天外だけど、今回のはいつも以上に突飛というかどこまでも不可解(笑)
書評でよく「トリックがあまりにも偶然にたよりすぎている部分が多い」と批判を受けているけれど、私的にはその偶然ですらミステリアスでぞくぞくするので楽しめるところでした。
偶然ですら何かの因縁によって必然的に起こるような気になってきます。
好き嫌いはかなり分かれる一冊だと思うけど、この作品はこうでなくちゃ!というこだわりが私にはあまりないというのと、乱歩的なおどろおどろしい雰囲気が好きなのでかなりいい感じで味わえた作品。
時々挟まれる昔のエピソードの語り口調がなんとも不気味。
ラストの博物館めぐり(?)はもうなんとも言えない生々しい狂気。


『御手洗潔の挨拶』

短編集。短編は御手洗潔の素敵さが際立ってます。
トリックなどは長編の満足感は味わえないけれど、気軽に読めて御手洗さんの魅力満載。
特に『数字錠』は短編の中でも人気の高い作品みたいです。涙を誘う・・・。誘われた・・・。
短編は遊び心があって、これはこれでまたいいなぁーと思う。御手洗ファンは必読。


『御手洗潔のダンス』

これも短編集。『御手洗潔の挨拶』よりさらに御手洗マニアック度アップ。
短編だけど、社会に対するメッセージ的なものや人間社会の問題点など作者の思いのようなものが読み取れる気がする。『舞踏病』はその点でもとても印象的。
『近況報告』では事件ではなく石岡くんと御手洗さんの日常が面白く描かれている。
つくづく島田荘司さんの作り出したキャラクターや世界観の素敵さに感動します。
そして、DNAについての御手洗さんの講義(?)はものすごく興味深い。
DNAを書き換えることってできるんだ・・・というかDNAによってすべて決定されているのかもしれないというところにもなんとも科学を超えた神秘性を感じる。

別窓 | Books | コメント:0 | トラックバック:0 |
ゴールデンスランバー
2008-01-28 Mon 17:12


一部ネタバレありかもしれません。
これから読む人はスルッと通りすぎてみてください。


ラジコンヘリによる首相暗殺の濡れ衣を着せられた青柳。
久しぶりに会った旧友に「巨大な陰謀に巻き込まれている。逃げろ!オズワルドにされるぞ。」と言われ、正体の分からない敵から逃げ続けることに。
あまりに深い絶望と恐怖の闇の中、誰が見方で誰が敵・・・?
果たして青柳は逃げ切れるのか・・・?


ドキドキした。
『オーデュボンの祈り』を読んだ時と同じく、ページをめくる手が止まらない。
本を読んでいるというよりは、もう本の中の世界に自分も入り込んでいたようなそんな感じ。

伊坂さんの本の登場人物は、からっとしてるけどあたたかい人や絶対出会いたくないような冷酷な人、どこかで出会ったことのあるような人など、とても印象に残る人物が多い。
伊坂幸太郎という人は、人をすごくよく見ていて人が好きな人なんだろうな~と思う。
良くも悪くも人間らしい人間、ちゃんと本の中で生き生きと存在している人物ばかりだ。


青柳雅春が、巨大な陰謀に巻き込まれながらもどうにか生きていられたのは、信じてくれる人がいたから。どんな情報にも圧倒的大多数の周りにも流されることなく、「青柳雅春」という人間を信じてくれる人。この世にいなくなってからも、時々青柳雅春の心の中に響く友人の言葉がなんだかじんわりきました。
人間って脆いけどけっこうタフなのかもしれない。信じてくれる人がいるだけで、大きなものにも立ち向かうことができるというのはあるかもしれないと思うから。


今回は敵が見えなくてとてつもなく巨大なだけに本当にぞっとした。
知らないだけでこの世にはたくさんあるんだろうな・・・情報によって操作されてることや、思い込まされてることって。

なんか読みながら、映画『トゥルーマンショー』を思い出した。
なんかあの映画を観た時の怖さに似てた。


そして、その恐怖感はじんわりあたたかい余韻とともにまだ残ってます。






















別窓 | Books | コメント:2 | トラックバック:0 |
| チャップリンと木の下で | NEXT
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。