
アンパンマンの作者、やなせたかしさんの絵本。
色々好きな絵本はあるけれど、いちばん涙が止まらなかった絵本。
こんな可愛らしい表紙だけど内容はすごく深くて色々と考えさせてくれます。
〜ここからネタバレあり〜
愛する母親を殺した狼に復讐するために、その狼に弟子入りし、復讐の機会を待つ仔ヤギのチリン。来る日も来る日もただ強くなるために、狼のもとで猛特訓の日々。そして時は過ぎ、ついに狼を殺す絶好の機会が訪れる。とどめを刺す瞬間、狼は言った。
「お前に殺されることは知っていた。オレは喜んでいる。」
その瞬間にチリンは悟ってしまった。狼があんなに憎くて仕方なかったのに、いつの間にか大好きになり、かけがえのない存在になっていたことを。でももう狼はいない。気づいた時には、もう隣に狼はいなかった。
失って初めて大切なものだと気づく。
強迫観念のようなものにとらわれ、何が自分にとって大切なのかが分からなくなる。
哀しいかな、これがこの世に生きている者の性なのでしょうか。
復讐は悲しみしか生まない、とこの絵本は教えてくれているような気もする。
けれど、そうは分かっていても愛する者を奪われた悲しみから復讐せずにはいられない気持ちはすごく自然なことだとも思う。哀しい。生きている者は常に真理と心理の間で揺れ動き、葛藤して生きていかなければならないだろうから。抑えきれないものだってある。きっとその時どうあがき苦しんでも、消そうとしても消えない気持ちだってあるだろうから。
狼だってきっとたくさんのものを背負って生きてきて、チリンによって殺される時が来て、やっと解放されたような気分だったのかもしれない。
この絵本との出逢いは、やなせたかしさんの展示会。
アンパンマンの絵がたくさん並ぶ中に、ひっそり端のほうに一枚一枚貼り付けて飾られていたこの物語を何気なく見つけ、一気に釘付けになったのを覚えている。
私の人生に潤いを与えてくれた一冊です。