
キム・ギドクにすっかり魅了されています。
『春夏秋冬そして春』『サマリア』に続く3作目。
この世は夢か現か。
誰しも孤独を抱え、ぽっかり穴が空いた心を埋める誰かを待ち続ける。
暴力を振るう夫によって家に閉じ込められた人妻ソナ。抜け殻のように生きるソナのもとにある日、留守宅を転々とする謎の青年テソクが現れ、ふたりの秘密の他人宅での生活が始まった。言葉を交わすことなく孤独な心と心がそっと寄り添う。そして、その旅の果てにはかなくもささやかな幸せが、2人を包む・・・
主人公の2人とも、終始言葉を発しない。
最後にたったひとことだけ発するソナの「ある一言」以外は。
なのに、なぜか言葉以上に心にぐっと迫ってくるような感情が、無言のテソクとソナの間に流れている。静かで緊迫感のある空気の中に、不安でどこか死の臭いさえするような妙な感覚。
自分が恐れているもの愛しいもの、目にするものすべて、どこまでが夢で現実なのか。
果たして夢と現実の境目なんてあるのか。ほんとのところは、どちらが自分にとってのいわゆる「現実」と呼ばれるものなのか。それともそんなもの最初からないのか。
最初からなくて、ただ自分の目に映るもの感じるものすべてがそのまま本当であるのかもしれない。
この物語の中に自分がいる間はすべてが分からなくなり、不安だけど心地いい、もやもやするおかしな錯覚に陥る。
静かなシーンの中に、時折ぞっとするほど鋭い視線を感じるというか・・・自分の心の中を見透かされてるのでは、という恐怖感を感じたりもする。でも、全体を優しく見守っているような、あたたかいもので物語を包み込むような目線で描かれているような気もする。
これはキム・ギドク監督の作品に共通したものなのかもしれないけれど。
観たことない。
こんな感覚になる映画は知らないです。