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『眩暈』
『ぼくのまわりのなにもかもが、どくでよごれています・・・』
という大きなひらがなだけで書かれた奇妙な手記から始まる。 死体を組み合わせて両性具有者を作り出したり、外の世界が突然世界の終わりのような光景に一変したり、と精神異常者の手で書かれたものとしか思えない文章をきわめて論理的だと解釈し、御手洗潔が鮮やかに謎を解き明かす様は見事。
自分のすべての物事に対する見方がいかに狭いものかということに気付かされる。 終始広がる幻想世界に迷い込んだかのようで、この世界観に酔う。 何度も自分の視点をひっくり返され、そのトリックのスケールもかなり大きなものになってます。ひとつの悲しい事件を覆うこの幻想性が、謎をさらに広げてそして深めているような。
そして、豊かさと引き換えに人間たちが失ったもの、犠牲にしたものに対する作者の深い想いを感じる作品でもありました。この世界の隠れたところ、または隠されたところにこそ、想像を絶する深い悲しみがいつの時代にも存在しているということを感じる。
事件の真相が、トリックによって真実とは一見まったく違って見えるように、深い痛みや悲しみほど見えないベールに覆われているのかもしれない。
『水晶のピラミッド』
古代エジプトの悲恋、タイタニック沈没、アメリカ・ビッチポイントなど時空を超えたいくつかのストーリーを展開しながらひとつの世界観が出来上がっていく。それぞれの物語がとても興味深く、それらが事件に繋がっていくから面白い。この作品が取り扱うテーマ自体も「文明の死」というとても大きなものです。
アメリカ・ビッチポイントにある学者によって作られたピラミッドで起こった事件を中心に物語は展開しますが、今回もとてつもなく大掛かり(笑)謎解きどころか、ただただスケールのでかさに驚かされるばかり。そして、ラストのラストでさらに驚愕・・・。
正直トリックなどは何がなんだか分からなくなってくるけれど、どんなに大風呂敷を広げても最後にはちゃんと人間を人間として描いている気がするのです。 本格ミステリなんだけど、読後のいつも感じるこの切なさは何だろう?と考えた時に『眩暈』のレビューにも書いたように、そこには気付かれることのない痛みや悲しみに対する作者の想いが込められているからなのかなと思います。
ピラミッドの謎について語られている部分もとても興味深い。 そして、スキューバやエジプト旅行を疑似体験までできる。臨場感(?)あるんですこれが。 御手洗シリーズの中では多少物議をかもし出している作品と聞きますが、作者がひとつのところにとどまることなく作品ごとに色んな試みをしているような感じが私は好きです。
カフェで4時間読み続けてもあまり進まない程、私にとっては少し難解で分厚い本だったけど(笑)
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