チャップリンと木の下で いつか語り合いたい、来世あたりに。
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虚無への供物
2007-10-19 Fri 15:24




小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、夢野久作『ドグラ・マグラ』と共に日本の「三大奇書」の中のひとつに挙げられている中井英夫の『虚無への供物』

アンチミステリーという言葉に好奇心を刺激されて、手にとってみた一冊。
妖美な幻想的世界観の虜になり悠々と読んでると、最後に一気に現実と非現実をひっくり返されました。
「本格物最後の墓碑銘」とまで絶賛される本作は、ミステリとか小説とかそういうカテゴリを越えて、自分自身の存在とか価値観とかをすべて震撼させるものすごいものが込められているような気がして恐ろしくもあった。ホントにある意味怖い。

だって・・・いきなりこっちを見て語りかけてくるんだもん(笑)


~あらすじ~
昭和29年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、従弟の藍司らのいる氷沼家に、さらなる不幸が襲う。密室状態の風呂場で紅司が死んだ。そして叔父の橙二郎もガスで絶命。事故か事件か?
駆け出し歌手・奈々村久生らの推理合戦が始まった。
そんな推理合戦をあざ笑うかのように、推理すればするほどどこまでも深まる謎。
妖しい光に彩られた4つの密室殺人は終章の悲劇の完成と共に、現実と非現実の倒錯する闇の世界へ読者を導く・・・


アンチミステリーとはいうものの、本格的推理小説的な謎解きも十分味わえるような気がするのですが、ただ・・・その本格推理小説的な部分はあまりに衝撃的なラストのための前座に過ぎないのでしょうか。前座というよりは、読み手に対する挑発というか愚かしさを知らしめるための道具に過ぎなかったのでしょうか・・・。

ラストの「独白」で物語の真実が明らかになるものの、読み手である私の中の真実は一気に揺るがされ、困惑し、すべてのものの常識と非常識の境界線が分からなくなった。
そのときはもう本を読んでいる感覚ではなく、ただただ突きつけられた疑問に答えることもできず放心状態(笑)なんなんだこれは!!!


こんな感覚になったのは初めてでした。
ただ、けっこう昔に書かれた本で独特の文体なため、読みやすいとは言えない&好き嫌いが激しく分かれる本だと思われます。


私の中では・・・いまだ、この本の衝撃を超えるものなし。


















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オーデュボンの祈り
2007-10-13 Sat 16:31




伊坂幸太郎にハマるきっかけになった一冊。
何か最近のオススメの小説はと言われたらこれをオススメする。


コンビニ強盗に失敗した主人公は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。その島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこで人間たちに崇拝されているのは、言葉を話し未来を予知するというカカシ「優午」だった。
しかしある夜、何者かによって優午が「殺害」される。なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか?

・・・とあらすじはこんな感じだけど、短い文章ではなかなか表せない。
正直、あらすじでは全く分からないというか伝わらない面白さがあると思う。

この物語にはしゃべるカカシ、嘘つきの画家、体重300キロのウサギさん、島の規律として殺人を繰り返す男「桜」、天気を予測する猫・・・こんな現実離れした滑稽で奇妙な登場人物ばかりが次々と登場する。でもただのファンタジックな物語ではなく、妙にリアリティがある。
これらの登場人物の感情がやたらリアルに読み手に伝わってくる。
まるで自分がこの荻島にいて、そこの人々に出逢ったような妙な親近感があったり、島自体が抱える大きな悲しみの中に自分もいるような不穏な感覚があったり。

物語に登場する人々の一言ひとことにもハッとさせられる。
普段、私たちが分かっていながらも気付かないフリをしてどこかに押し込んでいる感情や、人に対する口にはなかなかしにくい切実な想いをさらっと示してくれていたりする。
何が真実かよくわからなくなる現実に対しての不安を、この本は分かってくれているような気にさえなってしまいました(笑)

ファンタジックな設定の中で人間のダークサイドを描きながらも、最後には人間が好きでいられるというか、あたたかいものもちゃんと置いていってくれる。絶望と希望をあわせ持ったものとして鮮やかに描かれている気がします。


・・・この島にたったひとつ足りないものって?


そんな最大の謎が紐解かれた時の爽快感も、またこの本の魅力のひとつです。





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チリンのすず
2007-09-26 Wed 14:47



アンパンマンの作者、やなせたかしさんの絵本。
色々好きな絵本はあるけれど、いちばん涙が止まらなかった絵本。
こんな可愛らしい表紙だけど内容はすごく深くて色々と考えさせてくれます。


~ここからネタバレあり~

愛する母親を殺した狼に復讐するために、その狼に弟子入りし、復讐の機会を待つ仔ヤギのチリン。来る日も来る日もただ強くなるために、狼のもとで猛特訓の日々。そして時は過ぎ、ついに狼を殺す絶好の機会が訪れる。とどめを刺す瞬間、狼は言った。

「お前に殺されることは知っていた。オレは喜んでいる。」

その瞬間にチリンは悟ってしまった。狼があんなに憎くて仕方なかったのに、いつの間にか大好きになり、かけがえのない存在になっていたことを。でももう狼はいない。気づいた時には、もう隣に狼はいなかった。


失って初めて大切なものだと気づく。
強迫観念のようなものにとらわれ、何が自分にとって大切なのかが分からなくなる。
哀しいかな、これがこの世に生きている者の性なのでしょうか。

復讐は悲しみしか生まない、とこの絵本は教えてくれているような気もする。
けれど、そうは分かっていても愛する者を奪われた悲しみから復讐せずにはいられない気持ちはすごく自然なことだとも思う。哀しい。生きている者は常に真理と心理の間で揺れ動き、葛藤して生きていかなければならないだろうから。抑えきれないものだってある。きっとその時どうあがき苦しんでも、消そうとしても消えない気持ちだってあるだろうから。

狼だってきっとたくさんのものを背負って生きてきて、チリンによって殺される時が来て、やっと解放されたような気分だったのかもしれない。


この絵本との出逢いは、やなせたかしさんの展示会。
アンパンマンの絵がたくさん並ぶ中に、ひっそり端のほうに一枚一枚貼り付けて飾られていたこの物語を何気なく見つけ、一気に釘付けになったのを覚えている。

私の人生に潤いを与えてくれた一冊です。



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